新生への希望と、戦争を経験しても毫も変わらぬ現実への絶望感との間を揺れ動きながら、命がけで新しい倫理を求めようとした晩年の文学的総決算ともいえる代表的短編集。家庭のエゴイズムを憎悪しつつ、新しい家庭への夢を文学へと完璧に昇華させた表題作、ほか『親友効歓』『トカトントン』『父』『母』『おさん』『家庭の幸福』絶筆『桜桃』、いづれも死の予感に彩られた作品である。

ISBN:410820137X 文庫 太宰 治 新潮社 1987/12 ￥1，631

九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく――。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか？　死体をどこへ隠せばいいのか？　恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作。

ISBN:4087471985 文庫 乙一 集英社 2000/05 ￥440

人の夢を喰う代わり、寄生主に超常の力を与える“虫”が出現して10年――薬屋大助は極秘機関に所属する最強の虫憑き“かっこう”として、モイラ高校での監視任務につく。監視対象は大助を兄のように慕う盲目の少女・千莉だ。だが“始まりの三匹”と呼ばれる最も危険な虫憑きの一人、“浸父”が千莉を襲ったことから、千莉は列車で移送、隔離施設に収容されることに!愛しさと憎しみの軌道が交錯する、夢みる者たちの胸焦がす旅路。

ISBN:4044288046 文庫 岩井 恭平 角川書店 2003/10 ￥630

「おまえ、なんでそんなに漫才好きなの？」「なんでて、おもろいやつが一番やないか」「一番て……そうか、そうかなぁ」「決まってる。勉強できたかて、スポーツできたかて、なんぼのもんや。たいしたことあらへん。やっぱ、おもろいやつが勝ちやで。絶対や、歩」 漫才『ロミオとジュリエット』の行方は……？

ISBN:4902314347 単行本 あさの あつこ ジャイブ 2004/03 ￥651

私たちは十日前に結婚した。しかし、私たちの結婚について説明するのは、おそろしくやっかいである――。笑子はアル中、睦月はホモで恋人あり。そんな二人は全てを許し合って結婚した、筈だったのだが…。セックスレスの奇妙な夫婦関係から浮かび上る誠実、友情、そして恋愛とは。傷つき傷つけられながらも、愛することを止められない全ての人々に贈る、純度100％の恋愛小説。

ISBN:4101339112 文庫 江國 香織 新潮社 1994/05 ￥420

第9回電撃ゲーム小説大賞で金賞を受賞した成田良悟の受賞後第1作『バッカーノ！1931鈍行編』と同時間軸、別視点で語られる「特急編」。少年はNYの友達と会うため、列車に乗り込んだ。作業着の女はNYの雇い主と会うため、列車に乗り込んだ。車掌は――仕事なので列車に乗り込んだ。あの事件さえ起こらなければ、彼らは何事もなく目的地に着く筈だった。だが怪物は目覚めてしまった――その名は“線路の影をなぞる者”。

ISBN:4840224595 文庫 成田 良悟 メディアワークス 2003/09 ￥599